心霊現象の噂が絶えない地──ラーナック城

2. ラーナック家に起きた歴史的悲劇

ウィリアム・ラーナックの生涯

ウィリアム・ラーナックは銀行家・商人・政治家として成功を収めた人物だった。彼は家族のためにラーナック城を建設したが、その豪奢さとは裏腹に家庭環境は安定していなかった。

家族を襲った連続死

最初の妻エリザが若くして亡くなり、続いて最愛の娘ケイトも腸チフス（typhoid）で命を落とした（一部資料では「結核」とされるが、死亡記録を参照した研究や複数の資料で腸チフスとされている）。 度重なる死は家族に暗い影を落とし、後に城を「不吉な場所」とするイメージへと繋がっていく。

家族間の不和と財政悪化

ウィリアムは再婚と再々婚を重ねたが、継母と子どもたちの不和は深刻だった。政治的緊張も重なり、財政は傾き、かつて富の象徴だった城は維持が困難となっていった。

ウィリアムの自殺

1898年、ウィリアム・ラーナックは議会議事堂で拳銃自殺を遂げる。経済的失敗、家族の不和、そして妻の不貞の噂など、複数の要因が重なったとされる。城で起きた事件ではないが、この衝撃的な最期が城の“呪い”という物語を強化した。

再婚相手であるメアリーは最初の妻エリザの異母妹であり、ウィリアムの6番目の子グラディスを溺愛しており、政略結婚だったのではという説もある。

再再婚相手であるコンスタンスはウィリアムの次男ダグラスと不倫関係にあったとされている。

城の放棄と転用（精神病院・兵舎）

ラーナック家は城を維持できなくなり売却に至った。20世紀前半には精神病患者の仮施設、兵舎、農場施設として使われ、荒廃していく。華やかだった城が、用途不明の建物へと転落していく過程は、「負の気配」を生む源となり、心霊伝説に説得力を持たせている。