前回に続き、バヌアツ・エファテ島近海の浅瀬に残るF4Uコルセア墜落機を探してきた。
バヌアツとコルセア――背景
コルセア(F4U Corsair)とは
コルセア(F4U)は、逆ガル翼と大径プロペラを備えた米海軍/海兵隊の艦上戦闘機だ。1942年の実戦投入以降、太平洋戦線から朝鮮戦争まで長く運用され、対空戦闘だけでなく地上攻撃でも成果を上げた。特徴的な翼形状はプロペラクリアランス確保と脚の強度確保のためで、着艦時の扱いづらさを克服する改良を重ねながら多数が生産された。いまも各地の海や密林に戦争の証として残骸が点在している。

バヌアツにおける米軍基地と航空戦力
バヌアツ(当時はニューヘブリディーズ)は、太平洋戦線における補給拠点・前線支援基地として重要性を持っていた。エファテ島ではクォイン・ヒル飛行場(Quoin Hill Airfield)が整備され、コルセアを運用する部隊も展開した。こうした環境下では、燃料切れ・故障・視界不良などによる不時着・墜落事故も発生していたと考えられる。
現地情報では、墜落したコルセア機体が海岸近くやマングローブ域、水中に残されている場所が多く存在しているそうだ。
探訪記:墜落コルセアを目指して
例の如く、早朝、Tomにホテルで拾われ目的地へ向かう。
前日にWW2 memorabilia と同日に訪れようとしたが、日曜でオーナーが不在だったため見学は叶わなかった。翌日改めて訪問することになり、Tomに再調整を依頼した。
事前情報では、現場は潮の影響を受けやすく、干潮時が適していると聞いていた。後ほどこの忠告の意味を痛感することになる。

ポートビラから車で約1時間半。
正面入口に到着すると畑を耕す親子がおり、「後で行くから先に進んでくれ」と告げられ、我々は奥へ進んだ。

途中、放牧された牛に道を塞がれた。バヌアツに限った話ではないが発展途上国の家畜は、範囲は限定されていても自由に動ける。先進国の家畜は狭い小屋に閉じ込められ、動くこともなく肥やされる。儚い生だと思う。同じ制約は人間にもある。利益を生むために雇われ、毎日同じ道を往復し、自由は給与に換算される。「定年後に好きなことを」「FIREしてから」などと繰り返しながら、時間は尽きていく。私もその一人だ。

そんな思考を巡らせているうちに目的地に着いた。Tomが言う。「墜落地点まではボートだ」と。目の前にあったのは赤いボートと、錆びた銀色のボートだ。

オーナーは現れず、Tomは犬と戯れながら時間を潰した。彼は子豚好きで、道中でも車を止めて買おうとしたほどだ。
50分後、ようやくオーナーが現れ、手には小さなモーターを抱えていた。私の不安は当たった。案内されたのは、錆びた銀色のボートだった。
「待たせたな!さあ行こう」

沈んだことはあるかと尋ねると、「波次第だ」との返答。私は機材とデータの無事を祈り、船に乗り込む。

マングローブ林を抜け、湖に出る。

マングローブ林を抜けると湖に出た。墜落はここかと問うと、オーナーは「さらに先の海だ」と答えた。
「は?海?」
そして、ボートは再びマングローブ林を抜け、ついに海へ出た。

雑な写真に読者は察しているだろう。その通り、私はビビっていた。沈没することに。
海は荒れていた。波にぶつかるたびに水飛沫がカメラにかかる。私は叫び声をあげながら、必死にしがみついた。




やがて到着。目の前の海中に、胴体の一部と見られる金属片が沈んでいた。波が高く、撮影には適さない状況だったが、それが探していたコルセアの残骸であることは明らかだった。
反省点としては次回同様の撮影をするときは偏光フィルターと水中カメラ(Gopro)を用意すべきと学んだ。


エンジンの一部も確認できた。18シリンダーが力を生み、この機体を飛ばしていたという。
この場所ではシュノーケリングも可能だという。確実に記憶に焼き付けたいなら、水中に潜るのがいいだろう。ただし、再びボートに戻れるかどうかは別の問題だ。
(飛び込んだ後、ボートに戻れる気はしないが…)
以上、F4Uコルセア墜落機探訪記とする。次回は、神秘の島と火山について記す予定だ。



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